技能実習生も 住民税を納めないといけないの?
2022.11.21
こんにちは。来日2年目の技能実習生から、
「給料から住民税が引かれていました。昨年は引かれてなかったのに、どうして?」
って聞かれました。少し不満げでした。
入国した時に説明してるんだけど、わかりにくかったんだね。反省します。
ざっくり言うと、1年以上の在留資格を持つ外国人は、
原則的に日本人従業員と同様、住民税の課税対象となります、以上。
えっ、それだけ?もっと分かるように説明してください。
住民税は「地域社会の会費」
では、そもそも論から。「所得税」と「住民税」の違いとは?
うーん、国に納めるのが所得税、
住んでいる自治体に納めるのが住民税でしょ?
そうだね。公的なサービスは、国と地方とが分担して提供しています。
その主な財源は税金。
所得税は国が徴収する「国税」で、住民税は、住んでいる地方自治体が徴収する「地方税」の一種です。
住民税は、その地域に住む人たちが、生活に身近な行政サービスを分担する「地域社会の会費」のようなものです。
福祉、消防・救急、ゴミ処理などは、
住民税でまかなわれているって言えば、実習生も納得してくれるかな。
働いている外国人も住民税の課税対象
行政サービスは、住民がみんなで公平に負担します。
住民税には、個人が納める「個人住民税」と会社が納める「法人住民税」がありますが、
ここでは個人住民税について説明します。
では、次の質問。住民税を納める義務がある人の条件は?
住民であること?
住民税は、1月1日時点に住所があり、前年に一定額以上の所得があった人に課されます。
1月2日に引っ越ししたとしても、1月1日時点の居住地に納税します。
国籍は関係なくて、この条件に合う外国人の方は、日本人と同様、住民税を払わなければなりません。
ですから、実習生にも住民税を支払う義務があります。
技能実習生の住民税は?
では、この実習生は、どうして1年目に住民税が引かれなかったんですか?
住民税は、前年、つまり来日した年の1月1日から12月31日までに得た所得に基づいて算定されて、
来日2年目以降から支払いが始まります。
前年度の所得がなければ、住民税は課税されません。
また、来日1年目の実習生は、住所はあっても税金の区分上は「非居住者」扱いになるので、住民税は発生しません。
実習生の場合、「特別徴収」といって、所得税と同じく給料からの天引きが義務付けられています。
所得税は来日1年目から発生するけど、住民税は2年目から引かれるので、給料の手取り額が減ります。
これって新卒の社員と同じことだよね。
私なんかも新卒2年目に気がついて、経理にすっ飛んで行って文句言いましたもん。返り討ちにあいましたけど。(恥)
税金が給料から天引きされるシステムがない国もあります。
実習生がムカついた気持ちもよーくわかります。
「租税条約」による住民税の免除
住民税に関しては、ほとんど日本人と同じなんですね。
2年目以降から住民税が発生することってことは、
入国時にちゃんと理解してもらわないといけないですね。
ルーチンに従って説明しても、わからない場合もあるから気を付けて。
もう一つ、入国時に確認することがあります。
こちらは少し得する話。
実習生には、住民税の免除が認められる場合があります。
それが「租税条約」。
何ですか、それ?
海外で働いて得た所得に関しては、所得を得た国と母国の両方から課税されてしまう恐れがあります。
二重課税にならないように、それぞれの国同士で租税条約というものを結びます。
実習生の出身国と日本国との間で租税条約が締結されている場合は、
所得税と住民税が免除される場合があります。
租税条約は、締結国によって適用の対象や条件が異なります。
例をあげると
・中国の場合:「生計、教育または訓練のために受け取る給付または所得は免税」なので、実習生の住民税は100%免除。
・インドネシアの場合:「年間60万円を超えないものは、5年間に限り免除」
租税条約が結ばれていない国もあります。
・ミャンマー、カンボジア、モンゴル、ラオスなど
実習生の租税条約については、外国人技能実習機構「税金の免除に関するお知らせ」[pdf形式:87kb]を参考にしてください。
気を付けてほしいことがもう一つ。
租税条約に該当すれば、自動的に免除されるものではありません。
租税条約による住民税の免除を受けようとする場合は、届出書や所定の書類を提出しなければなりません。
詳しくは、国税庁の「我が国の租税条約等の一覧」 を参照して、わからなければ最寄りの税務署に問い合わせてください。
租税条約って手続きが要るけど、実習生のためになることですね。
他にもお得なことってないですか?
実習生の住民税も扶養控除OK?
あります。住民税は所得税と同じく、扶養家族の申請をして、確定申告することで減額することができます。
実習生にも適用されますが、条件が厳しくなりました。
詳しくは、「【2023年1月1日以降の所得税】 国外居住親族の扶養控除等の要件が厳格化されます」をご覧ください。
帰国する時の住民税は?
ところで、帰国する時の住民税はどうなるんですか?
日本に住まなくなったら、払う必要ないんでしょ?
さっき説明したように、住民税は前年度の所得に対して課税されます。
住民税は給与から天引きされるけど、帰国する際には、残りの住民税を支払わなければなりません。
残りの住民税を支払う方法は2通りです。
1)退職時の給料や退職金から一括で天引きする方法
2)日本に住んでいる人に納税管理人になってもらい、本人に代わって住民税を納めてもらう方法
どちらの方法にするかは、実習生の住む自治体と相談してください。
支払うべき住民税が支払われていないと、在留期間の更新申請等が許可されなかったり、再入国する際に査証が下りなかったりする場合があるので、気を付けてください。
租税条約や扶養控除のことも確認してみます。
せっかく制度があるんだから、有効に使わなくちゃね。
ありがとうございました。